失敗しない為のノウハウマガジン 独立開業塾

「成功Aさん、失敗Bさん」その2

AさんとBさんは、いわば「独立仲間」です。地元の商工会議所が主催した「創業塾」という独立希望者対象のセミナーで知り合い、年齢が近いこともあって、その日から意気投合。やがて、お互いをライバルであると同時に仲間として強く意識するようになりました。

Aさんはもともと独立志向の強いタイプではありませんでしたが、勤めていた会社がAさんの所属していた事業部を閉鎖することになり、割増退職金をもらって退職したのでした。会社は次の職場を斡旋してくれると言いましたが、48歳と年齢的に中途半端だったことと、子供も独立したので、これからは少し自由に生きてみようかと思って独立を考えたのです。奥さんが教員なので、無理して生活資金を稼ぐ必要がないという事情もありました。

一方のBさんは、たくさんの転職歴の持ち主。3~5年ごとに転職を繰り返し、この前までいた会社は5番目の職場でした。特にケンカっ早いというわけではなく、飽きっぽい性格でもないのですが、仕事に慣れるにつれて、「自分ならこうするのに」という思いが強くなり、上司と衝突してしまうのです。それならいっそ独立して、自分の思うようにビジネスをやってみようかと思い、セミナーを受けに来たのでした。

AさんとBさんはセミナーの後で居酒屋で語らい、お互いの夢を語り合いました。といっても、しゃべっているのはBさんばかりで、Aさんはもっぱら聞き役でした。2人はともにフランチャイズでの独立を目指すことになりました。

いろいろ検討した結果、Aさんは掃除用品などをレンタルするサービスを始めることにしました。担当地区をていねいに営業して回れば、いろいろな商品をレンタルあるいは販売していけると考えたからです。玄関マットや浄水器、空気清浄機など、多彩な商品があるのが魅力でしたし、本部のブランドも強力でした。

Bさんは印鑑ショップのフランチャイズ店を始めました。貯金をはたいて店舗を購入し、オフィス街で商売を始めたのです。転職歴の豊富なBさんは顔が広く、人脈のデータベースを使ってDMを出したところ、反響も上々。好調な滑り出しとなりました。

Aさんはコツコツと担当エリアを回っていました。もともと職人的な仕事に従事していたAさんは、営業が得意ではありません。なので、最初の1年は顔を覚えてもらうことだと割り切り、売り込みよりも自己紹介に力を入れて、いろいろなところに顔を出したのです。フランチャイズ本部が主催する勉強会にもまめに顔を出し、加盟店の友だち作りにも力を入れました。そのおかげで、先輩の加盟店から商売のコツを教わることができました。お客様を紹介してくれる加盟店仲間も出てきました。

スタートでAさんに大きな差をつけたBさんでしたが、本部とトラブルを起こしてしまいました。昔、懇意にしていた印刷屋さんからの売り込みで、独自商品を作ったところ、本部から規約違反だとクレームがついたのです。多くのフランチャイズの場合、仕入れ商品は本部指定のものしか認められませんが、Bさんは「売れれば本部も儲かるのだから」と、その規程を軽く考えていました。

その後もBさんは本部とたびたび衝突し、とうとうフランチャイズ契約を解除されてしまいました。それだけでなく、多額の違約金を請求され、ついにはBさんが本部を訴える事態に。完全な泥仕合となり、Bさんは商売どころではなくなってしまいました。

その間、Aさんは着々と地盤を築き、今では安定した売上げを得ています。お客様も増えたため、要望を聞きながら扱い商品を広げています。もうひと息で、サラリーマン時代の手取り収入を上回るところまできました。仕事のやりがいは、すでにサラリーマン時代を上回っているそうです。


【解説】
Aさんが選んだビジネスは、「ルートセールス」です。「巡回販売」「得意先営業」とも呼ばれます。この商売の特徴は、農業に似ていて畑さえ耕しておけば、作物(商品)は何でもよいところです。限られた顔の見えるお客さまのニーズを知り、対応する商品を売り込んでいくことで、息の長いビジネスが可能になります。個人の商売に最も適した方法でしょう。

対するBさんの商売は、似ているようで違います。多彩な商品があるところは同じですが、オフィス街で店舗を構えたために、不特定多数の顧客も相手にすることになります。メイン商品は印鑑で、これは消耗品ではないため、ルートセールスには不向きです。

2人のビジネスが明暗くっきりとなった原因は、ビジネスのスタイルではなく、フランチャイズのシステムに乗れたか、乗れなかったかにあります。結論から言うと、Bさんはフランチャイズではなく、独自ビジネスで商売を始めるべきだったかもしれません。

下記の表でわかるように、フランチャイズの利点は、すでにできあがっている商売のシステムを利用できるところにあります。欠点は、独自拡張がむずかしい点です。Aさんは不慣れな商売を始めるにあたって、フランチャイズの特徴をうまく利用できました。逆にBさんにはフランチャイズの欠点が鼻についてしまったわけです。フランチャイズビジネスを始める時は、この利点と欠点をよく検討し、自分に向いているかどうかを考える必要があります。

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